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宮城県美ネット/「宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク(通称:宮城県美ネット)」設立総会 開催報告

「宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク(通称:宮城県美ネット)」は、2020年7月21日に設立総会を開催しました。

本記事はその報告です。



●日時:2020 年7 月21 日(火)14:00 ~ 16:00 

●会場:エル・パーク仙台 5 階セミナーホール 

●参加者:75 名


 

発起人・早坂貞彦による開会の挨拶


本会の発起人である早坂貞彦(東北生活文化大学名誉教授、元宮城県芸術協会理事長)より、本会を設立するに至った趣旨が説明された。早坂は宮城県芸術協会の設立当初から会員として活動し、今なお名誉会員として自身の絵画の創作活動続けながら、宮城県の芸術文化振興に尽力してきたという自負があるという。

 宮城県美術館設立にあたっては、県民ギャラリー設置のための要望書提出や、チャリティー展示をとおして寄付金を集める等、地元作家として向き合ってきた経緯がある。今回の宮城県美の集約移転案について、「(宮城県美術館の設立含め)今までは県民と相談し、みんなで案を出して推進してきた芸術文化行政が、いつの間にか行政側の道筋で物事が運ばれるようになり、その結果が今回のような突然の移転案の提案だと考える。いつからか、県の本位は『香り豊かな宮城県の芸術文化』ではなく、『経済優先』になったように思われてならない」と述べた。

 ただ、集約移転案をきっかけにさまざまな団体や個人が声をあげたことについて、「県民、学術関係者、芸術関係者、市民運動という4 つの運動体が連帯する今回の取組は、宮城県においては恐らく類を見ないことであり、これ自体が素晴らしい文化運動である」として、ぜひ「宮城県美の現地存続」という一つの目標の下に緩やかに繋がり合いながら、宮城県の財産としての宮城県美を残していきたいと締めくくった。


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経緯説明


次に、本会事務局次長の高橋直子(㈱伝統建築研究所 代表取締役)より、今回問題となっている県有施設の集約移転問題について、ガイドブック『宮城県美術館と移転問題を知る』を用いて今回の経緯が説明された。本会が宮城県美の「現地存続」にこだわる理由として「5 つの疑問点」を掲げ、現地存続を望む県民に行動を見える形にして声や態度として宮城県に届けるために、県民ひとりひとりが意思を持って参加できる活動母体をつくる必要性について訴えた。



 

議事の提案と承認


 続いて、同じく本会事務局次長の森一郎(東北大学教授)が、本会の「設立趣意書」を読み上げ、宮城県美ネットは宮城県内のみならず、広範なネットワークをつくりながら、県民の財産としての宮城県美術館の存続を訴えていくことを確認した。また、組織体制を支える共同代表と顧問の紹介、そして規約について説明がなされた。

 さらに、共同代表の西大立目祥子(まち遺産ネット仙台代表・アリスの庭クラブ代表)より、宮城県美術館に現地存続への取組についての「共感」「連携」「連帯」を育んでいくための「7 つの行動計画」が示された。

 以上の事務局提案が参加者に諮られ、本会の設立が無事に承認された。


 


(写真)大宇根弘司氏(左)と酒井哲朗氏(右)




酒井哲朗氏からの応援メッセージ


 本会設立総会のために駆けつけた、宮城県美術館の初代学芸部長兼普及部長の酒井哲朗氏より、宮城県美の原点に触れるような話をうかがった。

 宮城県美設立にあたっては、「本格的な美術館をつくる」という宮城県の旗振りのもと学芸員が集められ、「観る」だけでなく「つくる」体験もできることを基本構想に据えて計画が進められたと言います。建築プランに関しても「『美の殿堂』ではなく『広場』を」という要望を現場から出したそうで、当時から多様な価値観に触れる場をつくることを意識した「開かれた美術館」を目指してハードとソフトの構築が進められていったことがわかった。

 酒井氏からは、宮城県美の集約移転問題について、「あくまでも宮城県民の問題であるから静観しようと思っていたが、疑問を持った県民が立ち上がって、このような会が本日開かれることになり、非常に感動している」と激励をいただいた。


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大宇根弘司氏からの応援メッセージ


 本会顧問を務める建築家・大宇根弘司氏にも檀上に上がっていただき、お話しいただいた。大宇根氏は、前川國男建築設計事務所のチーフとして宮城県美術館の本館設計に携わり、のちに佐藤忠良記念館を設計した人物である。宮城県美設計当時は、学芸部門の責任者であった酒井氏と綿密なやり取りをしながら設計を練り上げていったという。「美術館は学芸員の主戦場」であるから、学芸員が自在に展示を作り上げられるよう、当時は珍しかった4mの天井と、格子状の可動壁・照明配置に「四苦八苦」しながら仕上げたという。また、「前川建築らしさよりも、宮城県らしさを」という現場の意見から、壁面や床のタイルを工夫したことも語られた。

 建築家として「建築でいい街をつくって、人々に幸せを」という信念がある大宇根氏にとって、40 年を経て街にとけ込み、県民に愛され育まれてきた良質な建築である宮城県美が今回のような移転問題に巻き込まれてしまうこと自体が信じがたいことであり、「『建築が県下の文化を支えるものになっている』という意識がないのではないか」という疑問が投げかけられた。

一方で、本会の継続的な取組が宮城県に素晴らしい建築、ひいては文化をつくり上げる素地を醸成する契機になり得るとし、「大いに頑張っていただきたい」と激励をいただいた。


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共同代表・野家啓一からのメッセージ


 当日、やむを得ず欠席となった共同代表の野家啓一(東北大学名誉教授・元日本哲学会会長)からのメッセージを、同じ共同代表の西大立目が代読した。「これまで別個に活動を続けてきた幾つかのグループがそれぞれの立場を堅持しながら、今回『宮城県美ネット』という形でゆるやかに連帯し、一つの目標へ向かって手を携えて進めることは、きわめて意義深いこと」で、「宮城県美術館の現地存続にとって大きな力になりうることだと思」うという。「組織というのは、いったん出来上がるとどうしても硬直化しがち」だが、「このネットワークは参加される皆さんの開かれたアイディアで絶えずリフレッシュされるフレキシブルな運動体でありたい」という力強い意思表示がなされた。



 

共同代表・石川善美より閉会の挨拶


 最後に、共同代表の石川善美(東北工業大学名誉教授・元日本建築学会東北支部長)より、設立総会の閉会が宣言された。石川には、日本建築学会東北支部長(当時)として2019 年12 月に宮城県美術館現地存続に関する要望書を宮城県知事と県議会議長に提出した経緯がある。自身が日常的に宮城県美を訪れる立場として、酒井氏と大宇根氏から語られたような設立当時の思いを知り、「改めて宮城県美の素晴らしさに触れる機会となった」と述べた。

 「今回の移転問題は、専門家中心ではなく、県民が中心になって推進していくことが大事。さまざまな声に耳を傾けながら、活動していきたい」と今後の抱負を述べ、閉会となった。




写真 報道メディアも複数駆けつけ、関心の高さがうかがえた



 

▶︎2020年7月22日 河北新報

宮城県美術館の移転反対運動を一元化 「現地存続求める県民ネット」設立


▶︎2020年7月22日 朝日新聞宮城県版

県美術館移転 反対派が団体 現地存続へ共同活動



▶︎7/21 TBC東北放送

「宮城県美術館移転反対で県民ネットワーク設立」


Yahooニュース(転載記事)


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▶︎7/21 NHK仙台放送局

県美術館存続求める新団体を設立


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▶︎7/21 仙台放送

宮城県美術館の移転・集約計画 “現地存続目指し”新組織を結成


YouTubeにも動画あり(内容は同じ)








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