「宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク」設立の発起人である、早坂貞彦氏(美術家・元宮城県芸術協会理事長)による挨拶を掲載します。
2020年7月21日に開催した宮城県美ネット設立総会で話した内容です。
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コロナの大変な時に、こうやってお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
もっとたくさんの方が来場を希望なさいましたけど、人数を絞らせていただきました。ご了解ください。
私は、80半ばの老人です。もういろんなことをやめて自分の仕事をきちんとやりたいなと思っているところでしたが、昨年の11月、県の移転集約案が出て大変驚き、そして一緒に制作している若い美術作家たち、高校や大学で教えた連中が、これに対してどんどん立ち上がっていく様子を目にしました。
私も歳をとった者として言わなければならないことがあるのでは、という思いから、この運動に参加することにいたしました。
私は芸術協会の設立(1964年)以来、という事は宮城県民会館の設立と同じなんですが、この芸術協会という組織に入っております。
これまでの間に、県民会館、美術館や文学館、メディアテークができ、そして2,300席ホールの県民会館が欲しいという運動が起きてきましたけど、これらのほとんどが、県民や芸術協会による「こういうものが必要である」という要望陳情に基づいて行われたものであります。
そして、設立に向けて募金をしたりチャリティーをしたり、それが完成してからは、運営や企画に県民として参加し「こういったものを作って欲しい」ということを要望しながら出来上がってきたものでございます。
ところが、関係者が鋭意努力して宮城県美術館リニューアル案というものをつくり、宮城県としてその案を認めているにもかかわらず、それを無視して上からポンッと「移転集約する。」と言う話が降って参りました。
私たちは、「現地存続」という一点でみなさんと一緒にやりたいと思っています。
今まで県民がいろいろ相談し、みんなで案を出して、芸術文化行政がなされてきたと思うんですが、それがいつの間にか、だんだん行政側の道筋で物事が運ばれるようになってきた結果が、今回のような県庁内部の決め事を無視して移転集約するという状況につながったわけです。
私ども芸術家・関係者としては、宮城県の芸術文化に鋭意努力して参ったわけです。
皆さんお忘れかどうか知りませんけど、宮城県の県政のスローガンの第一番目に、「香り豊かな宮城県の芸術文化」ということが20年か30年前までずっと掲げられてあったんですが、いつの間にかそれはなくなって、「豊かな経済県を」が掲げられるようになりました。
今回、もちろん存続が最も大事なことですけども、宮城県の芸術文化がこれでいいのかと感じるわけです。
端的に申し上げますと、中学校高校には専任の美術の先生はほぼいなくなっています。そのように宮城県の芸術文化行政は、日本で最も貧しい県になっているのではないかと思います。
そして今回、宮城県民会館、宮城県美術館、みやぎNPOプラザの3つを集約化とするという案が出てきました。
これまで大抵の場合、新しい施設を作るときは我々の陳情要請というものが事前にあったはずですが、今回はそれは皆無だと思います。そのような経緯で作られても、しかも「面積を1+1+1 = 3以下にしろ」(※注)となっています。2,300席のホールを作るという方向で県は検討しておりますから、それを実現するとなれば移転した先での美術館の面積は現在の美術館よりずっと減るということが当然出てきます。
そのようなわけで私どもはまず、「存続を望む会」というものを元芸術協会の幹部を始め、東北生活文化大学の先生やら、リニューアル案に参加なさった人たちを集めて、会をつくりました。
そのように今回、私たち以外にも、たくさんの現地存続を望む集団が今日、集まって来られました。
東北大学の先生方150名以上の有志、日本建築学会東北支部、日本建築家協会、宮城県芸術協会、日本美術家連盟等が県知事ないし県議会に対して要望書を出しました。
加えて、要望書は出しませんでしたが、芸術協会の絵画・彫刻・書道の有志も現地存続を望んでいますし、さらに蔵王写生会とか、現代美術に取り組んでいる新現美術協会も現地存続を望んでいます。又、宮城県人会も声を上げております。
今回特に注目したいのは、ある喫茶店を中心に存続運動が起こり、市民たちがその喫茶店から始まって3ヶ月のうちに1,7000以上の署名を集めました。
͡͡如の様に、建築の関係者、東北大学の哲学科を中心とした学術の関係者、それから芸術の関係者、それから市民からの代表者というふうに、大きく4つのグループがこの運動に立ち上がりました。
考えてみますと、今まで宮城県にはこういう事はなかったので、これ自体素晴らしい文化運動であると評価しておりますが、なによりも目的は存続させることであります。バラバラに運動していたんでは県に思うようにされかねないと考えました。
今回、現地存続を求める団体、要望団体の5つがそれぞれ県から呼ばれて意見交換を行いました。県は非常に真面目に聞いたふりをしておりますが、どういう風に利用されるか解りません。
これから美術館現地存続の運動を展開しようとしていますが、それぞれの団体の良さを活かしながらも、それぞれの団体はそれぞれの団体で活動し、あるいは市民の一人ひとりの参加者が、緩やかな結合体を作って、これに立ち向かわなければなりません!一切県は方針を変えていないのです。
宮城県民は県の誇りある財産として美術館を愛しておるわけです。
その財産を失う事はあってはなりません。
ここにおられる皆さんを中心に緩やかな結合体を作って、頑張っていきませんか?これが今日の趣旨です。
これからいろんな計画を、事務局からいろいろ説明をいたしますけども、是非ご協力いただきたいと切にお願いを申し上げます。
宮城県芸術協会元理事長 早坂貞彦
※注 今回の集約移転では総務省の補助金が使われる可能性が高いが、集約する施設の今の合計面積より少ない面積で新築することが補助金の条件となる。集約する宮城県民会館は現在より席数やバックヤードの面積を増やす想定なので、宮城県美術館の面積が大幅に削られる可能性が高い。
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