top of page

宮城県美ネット/出前講座in青葉区、開催しました!

宮城県美術館の現地存続への思いや課題を共有するための出前講座。10月18日は仙台市青葉区にある宮城県民会館を会場に開催しました。今回で10回目となります!


まず西大立目祥子共同代表より、宮城県美ネットの現状について報告があり、個人会員が1,600名を超えたことが発表されました!活動開始から間もなく丸3か月。数多くの関心が全国から集まっています。



続いて、宮城県美術館の集約移転問題についての概要説明がありました。2017年度末に策定された「宮城県美術館リニューアル基本方針」があるにも関わらず、2019年11月に突如として「県有施設等の再編方針」として宮城県美術館が県民会館とNPOプラザとともに集約・移転する案が発表されたことに触れ、「行政手続き上の問題はないのか」「移転のメリットは本当にあるのか」等の疑問点が示されました。3施設の集約移転にあたっては、総務省の「公共施設等適正管理推進事業債」を活用することが濃厚です。この事業債を使うには、「新施設は集約した3施設の延床面積を下回らないといけないこと」「現在の建物を5年以内に譲渡か撤去すること」等が条件としてあるため、集約移転案が採用された場合には、現在の宮城県美術館は残されない可能性が高くなることが提示されました。

*詳しく知りたい方は、宮城県美ネットで制作した『宮城県美術館と移転問題を知るハンドブック』をご覧ください。



続いて高橋直子事務局次長より、宮城県は公共施設適正化に伴う集約対象施設を「築30年以上の県有施設」として宮城県美術館を選定したことに触れ、「宮城県美術館は本当に老朽化しているのか」という点について説明がありました。

宮城県美術館は1981年に竣工した前川國男建築設計事務所が手掛けた建築物です。宮城県美の躯体は鉄筋コンクリート造ですが、コンクリートの劣化を防ぐために外壁プレキャストパネル(工場で製作した質の高いパネル)が設置されており、躯体と外壁の間の空気層があることによって断熱効果が上がり、「一般的に、美術館は24時間空調が当たり前だが、宮城県美は職員がいるときしか空調をしていない」とのことで、館内の省エネ化にも寄与していることが説明されました。

建築家の前川國男は日本におけるモダニズム建築の先駆者として日本各地にコンクリートによる建築作品を残しましたが、長年の経験が工夫として宮城県美の建物に活かされていることを指摘した上で、設計当時の技術が詰まっている建築作品としても貴重であることが語られました。

コンクリートは風雨にさらされると中性化し劣化していきますが、宮城県美はコンクリートのコア抜き試験をして中性化していないことが判明しており、そうした点からも「老朽化している」という判断は尚早であり、建物の長寿命化が推奨されている時代に「壊して移転する」ことは正しい判断なのか、という問題提起もなされました。



続いて、宮城県美術館で副館長を務められた学芸員の三上満良さんより、美術教育の普及において先駆的な存在であるとして「創作室」の話がありました。宮城県美の創作室は、専従のスタッフがおり、常時ものづくりや鑑賞についてアドバイスを行っています。また、子ども向けのワークショッププログラムも充実しています。こうした多様な活動を支えているのは、建物のゾーニングです。創作室で発生する作業音や粉じんが展示室に影響を及ぼさないのは、間に広い中庭空間があるからであり、こうしたゆとりのある空間構成が移転集約した場合には失われる可能性があることも指摘されました。宮城県美術館の教育普及活動は全国的にも知られており、専門家による視察も数多く行われてきたそうで、そうした強みが移転による空間構成の変化で失われるかもしれないことは、大きな損失であると言えると考えます。



最後に、会場からも意見をいただきました。


「民意を行政に伝えていくことが大切。伝えるための努力を惜しみなく行おう!」というエール、「現在の美術館は、広瀬川や青葉山の景観も含めての総合芸術であり、移転によって失われてしまう美術体験はたくさんある。今の宮城県美の価値をわかってほしい」という切実な思い、「首長の発言がそのまま政策になるのはおかしい。ちゃんと議論を尽くしていこう!」という激励等、本当にさまざまなお話をいただきました。



閉会の挨拶として、早坂共同代表から「宮城県美の設立も、当時の宮城県芸術協会が要望したことがきっかけであり、私たちは絶えず市井から〈考えて動く〉ということを実践してきたはずだ。この〈考えて動く〉という文化を絶やしてはいけない」として、引き続きの宮城県美ネットへの賛同を呼び掛けました。



会場いっぱいの熱気に圧倒された出前講座でした。ご参加いただいた皆さん、ありがとうございました!

Comments


bottom of page