宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク 設立趣意書
宮城県美術館は、私たち県民の誇るべき文化拠点です。2018年3月にはリニューアル基本方針が示されました。ところが、2019年11月19日付け河北新報で、青天の霹靂のように美術館移転案が報じられました。建て替えが検討されてきた県民会館を仙台医療センター跡地に新築するために、宮城県美術館を現在の川内地区から移転して集約するというこの計画は、美術館も一緒に建て替えて機能を移し変えることを意味します。その後、現在の美術館の建物は県の所有から外すことが必須であり、つまり解体せざるをえなくなります。
この計画は、宮城県美術館に親しんできた県民にとってあまりに衝撃的でした。2019年12月以来、美術館の現地存続を要望する署名が多数集められ、宮城県芸術協会や東北大学の有志をはじめ、各方面から意見書や要望書が県に対して提出されました。新聞には移転反対の投書が連日のように載り、県の募集したパブリックコメントでも、寄せられた意見は圧倒的に移転反対でした。ところが宮城県は、美術館を県民会館とNPOプラザと集約・複合化する方向で更に検討を進める、という最終案を2020年3月末に策定しました。三密を避けることを余儀なくされているコロナ禍の状況下で、県有施設の集約・複合化計画を加速させています。
宮城県美術館の本館は1981年竣工で完成してからまだ39年、佐藤忠良記念館に至っては1990年竣工とまだ30年しかたっていません。東日本大震災でも建築本体に損傷はなく、コンクリート強度も十分です。こうした優れた建造物と貴重な収蔵品、素晴らしい景観とを兼ね備えた宮城県美術館を、現地に存続させていくことが宮城県の今後の発展にとって欠かせないと、私たちは確信しています。
反対意見を踏まえずに宮城県が再編案を推し進めているのに対して、私たちは、美術館の現地存続を切望する宮城県内の方々はもとより、全国に建つ前川國男建築の存続と保全に努めている方々や、各地で暮らす宮城県出身者の方々、さらには、国内外の宮城県美術館を愛する方々と、広範なネットワークを作り、宮城県の宝物である美術館を現地に存続させるための情報交換や市民活動を行う連帯組織を立ち上げようと考え、発足準備を進めて、本日、「宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク」(略称「宮城県美ネット」)の設立総会に漕ぎつけました。
私たちは、宮城県美術館を愛する宮城県民の方々と一致協力し、衆知を集めて全力を尽くす所存です。併せて、全国各地にお住まいの方々のご支援とご協力を切にお願いし、本会の設立趣旨を提案させていただきます。宮城県美を守りましょう。
2020年7月21日
宮城県美術館の現地存続を求める県民ネットワーク
共同代表 石川善美・西大立目祥子・野家啓一・早坂貞彦
役員体制 (2020年7月21日現在)
●共同代表
石川善美(東北工業大学名誉教授・元日本建築学会東北支部長)
西大立目祥子(まち遺産ネット仙台代表・アリスの庭クラブ代表)
野家啓一(東北大学名誉教授・元日本哲学会会長)
早坂貞彦(美術家・元宮城県芸術協会理事長)
●事務局長
大沼正寛(東北工業大学教授)
●事務局次長
高橋直子((株)伝統建築研究所 代表取締役)
森一郎(東北大学教授)
●顧問
五十嵐太郎(東北大学工学研究科教授・建築史家)
大宇根弘司(建築家・宮城県美術館佐藤忠良記念館設計者)
尾崎彰宏(東北大学文学研究科教授・美術史家)
佐々木健一(東京大学名誉教授、国際美学会元会長)
佐藤一郎(東北生活文化大学学長・画家)
松隈洋(京都工芸繊維大学教授・元DOCOMOMO Japan代表)
松本宣郎(東北学院大学前学長・東北大学名誉教授)
森まゆみ(作家・市民活動家・日本ナショナルトラスト理事)
山名義之(東京理科大学教授・DOCOMOMO international理事・日本イコモス理事)
渡辺雄彦(宮城教育大学名誉教授・日展会員・宮城県芸術協会名誉会員)
■事務局
〒982-0801仙台市太白区八木山本町1-38-3 高橋直子
電話:090-7664-1147
FAX:022-707-5303
メールアドレス:miyagikenbi.net★gmail.com (★を@にかえてご利用ください)
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